おおきな屋根の家
敷地は周辺に田園風景が未だ濃く残っているものの、宅地化の波が押寄せ始めている地域である。
若い夫婦と子供二人の家族が住まう場所として、まず一枚の屋根を架ける。屋根はこれまでの土地が持つ歴史、地域性、気候やそこに住まう家族のライフスタイル等、多様な環境に呼応し、これから長い時間をかけて更新を繰り返していく。
敷地の南北面に流れるこの切妻屋根は、かつての帝冠様式、モダニズム建築でのフラット・ルーフやポストモダン建築でのアイコン・ルーフ等の様式性、機能性、記号性とは異質なものとして、より「空間性」に富んだ多様な装置となる。
遺跡のように生き続けるための秩序ある「途中性」を持つおおきな屋根は、移りゆく環境を絶えず見守り続ける存在として、今後どのような変化を「紡いで」いくのか、その行く末をゆっくり見守っていきたいと思っている。